[PR]テレビ番組表
今夜の番組チェック

 

 

 

 

[ ふぇいくふぁー ]

 

 

ふと目を覚ました。

窓の外に目をやると、まだ外は暗い闇が全てを覆い尽くしていて。

気を抜いたらその黒が部屋ごと自分を浸食してしまう。

 

いつか見た悪夢のせいで夜中に目を覚ますのは嫌いだった。

多分、もう随分昔見た夢の話だ。

 

隣りでさっきから聞こえている規則的な寝息が自分を現実に引き留めてくれる。

伸ばした腕の先に肌の感触を確認して、信史はやっと息を吐いた。

「すぎむら」

名前を呼んで待つ。

相変わらず聞こえてくるのは規則正しい寝息だけ。

「なぁ、杉村」

カラダを揺らして呼び掛ける。

「んん・・・・」

微かに声がして。

闇の中、淀んでいた空気を裂いて弘樹がこちらに顔を向けたのがわかった。

肘をついて上体を起こし、顔とおぼしき辺りを覗き込む。

なにも見えないから、当てずっぽうに唇を探した。

前髪に触れて、瞼に触れて、鼻に降りる。

位置関係から推し量って頬に手をやる。

唇と唇が触れると、待っていたみたいに緩く開く。

舌を滑り込ませて、あまり歓迎的とは言えない感触を愉しんだ。

生暖かい口内で性感帯の端末を探しながら、ややしばらく唇を合わせたまま。

 

弘樹の腕が伸びて信史の肩を引き寄せた。

片肘に体重を掛けたままで抱擁に応える。

カラダ半分の重み全部弘樹に預けて。

「肩、冷たくなってるぞ」

うなじから肩胛骨への曲線を掌でなぞりながら弘樹が呟いた。

律儀に着込まれたTシャツを気にしながら信史は唇を滑らせる。顎から首に降りて、喉仏で少し休憩。

 

「今何時だ」

「知らない」

“離れ”というのは便利なもので――――

3年前に祖父が他界して以来使われていなかった杉村家8畳二間続きの“離れ家”。

いつからだろう。三村信史が杉村家に泊まるときには決まってこの部屋に布団が敷かれる。もちろん言い出したのは信史だったのだけれど、杉村は別段イヤな顔もせずに賛成してくれた。

廊下続きになっていてほとんど家から離れていない“離れ”というのもあるけれど、杉村家の離れは廊下で続いても居なければ、実のところ家とは完全に“離れ”ていた。

勉強するという名目で(いや、夜にはちゃんと勉強もしているのだが)信史が泊まりに来るようになって、この“離れ”の存在意義がはっきりした。祖父の他界以降使われなくなったこの家屋を取り壊すという話も出ていたようだが、この存在意義によって取り壊しは先送りになったと言ってもいい。

なにしろ、家族が眠っている家屋とは離れているのだから、ある程度の声を出しても聞かれないという安心感が好都合だった。

杉村が枕元に置いてあるはずの目覚まし時計を手探る。

顔の近くでライト機能を点灯させて時刻を確認。

「まだ3時だぞ」

「だから?」

一瞬だけ弘樹の眠そうな顔が暗闇に浮かび上がって、消えた。

それからもう一度ライトが点灯して、弘樹がなにやらカチカチ操作している。

目覚ましが鳴る時刻を確認しているんだな、とすぐに分かった。

どこまでも律儀なヤツだ。寝る前にも確認していたろーが。

そう思うと、なんだか妙に可笑しくて笑いのツボにスイッチが入る。

「クックックッ・・・」

喉元近くで唇を止めていた信史が急に笑い出したので弘樹は何事かと頭を擡げた。

「なんだ、どうしたんだよ?」

「ククククッ・・・」

喉に掛かる信史の息は生温くてくすぐったい。

「なに笑ってるんだよ?」

オンになってしまった笑いスイッチを止めるのはなかなか難しい。

「こんな夜中に、なんか可笑しいことでも思い出したのか?」

「プァッハハハハ!」

「三村、いい加減にしろ・・・」

マジメな受け答えが余計に可笑しくて、信史は笑い声を塞ぐため自ら弘樹の唇で蓋をした。

「んっ?」

唐突に、大笑いの次はキスをされて弘樹が慌てる。

まだちょっと可笑しい気持ちを我慢しながら舌を乱暴に挿入する。

ザラザラする感触を愉しんで、弘樹の舌が逃げないようにゆっくりと絡めた。

長いことそうしているうちに可笑しさは陰を潜め、また少しずつ気持ちが夜に飲み込まれそうになるのを感じる。

「明日、学校だぞ?」

弘樹の問い掛けはいつものことだ。

時間が多少早くたって、こう言って自制を試みる。

「わかってるよ?」

唇を離すと二人の間の距離がほとんどないのに改めて気付く。

もう少し、もっと距離を縮めたら、いっそひとつに溶け合ってしまえないだろうか?

信史の指先が弘樹のトランクスに伸びて、まだ覚醒していないペニスを弄ぶ。

カラダを起こして愛撫しながら、信史の唇はそれでも弘樹の唇に留まっている。

言葉を発しようとする努力は感じられたが、弘樹の口からはもはや切ない吐息しか漏れる隙がないようだ。

手中のソレはあっという間に覚醒して大きくなる。本人よりもずっと潔さを感じて信史はまたちょっと笑いそうになったが、このタイミングではスィッチをオンにするわけにいかない。

丹念に扱きながらカラダを移動させて、布団の中、信史が弘樹に跨る。

もともと何も着ないで寝ていた自分と違って、弘樹はTシャツにトランクスという律儀な格好だ。このままではヤリずらいことこの上ない。

「脱げよ」

耳元で囁くと、弘樹は意外にも素直に腰を浮かせてトランクスを下げた。

仕方なし捲り上げるのを手伝ってTシャツも脱がせてから、裸の素肌を密着して抱き合う。

表情の確認も出来ない暗闇だけど、明かりは点けられない。こんな時間に何をしているのかと疑問に思われるに違いないから。

まぁ、そんな事情がなかったとしても、明かりを点けるのはお互いにとまどいがあった。羞恥心も、罪悪感も、暗闇の中でなら少し薄まる気がしてたから。

弘樹の手が信史の腰に回って、やがて位置を落とす。

指がゆっくりと侵入してくる感じに信史は耐えた。何度経験しても、これだけは我慢が必要だ。ちょっと慣れるまでの異物感と嫌悪感。

既に臨戦態勢に入っている弘樹のソレは信史に押さえ込まれたまま濡れた感触でジッとしている。自分のペニスに触れると、それもまた同じように濡れている。

自分としてはどちらでも良かった。

厳密に言えばもちろんヤられる側に回るのはゴメンだったのだけれど、弘樹に挿入させてもらうことを考えたら、よっぽど手っ取り早いと考えたから。そもそもこんな関係に乗り気じゃなかった彼に無理矢理自分を受け入れることを強要するのはどうかと思ったし。

「はぁぁ・・・・んんっ」

2本の指が自分の中で動いている。丹念に感じる部分を探して、程よいリズムで。

堪えきれずに自分でペニスを扱くとクラクラするくらいの快感が頭の天辺に抜ける。

ガサガサと音が聞こえて、杉村が片手でコンドームの袋を破るのが分かった。

どこまでも律儀なヤツ。

気配を感じながらも黙って愛撫に身を任せる。

自分はどうしようか?このままヤッてティッシュで拭けばいいか・・・最初の頃みたいに血が出たりすることもないだろうし、染みくらい付いたって乾けば分かりっこないだろ。

装着を終えた弘樹が信史の腰を僅かに持ち上げる。

自分の手でかなりヤバイ状態だったせいなのか、信史のソコはキツク締まっていて、なかなか弘樹の侵入を許さなかった。

「も少し、力抜けよ」

「・・っ、わかってるって」

深く腰を落とし込むまでにはなかなかの時間を要してしまった。

自分で跨る体位(騎乗位)なんて、オトコ相手には初めてだよなぁ・・・・

そんなことを暢気に考える余裕はすぐに吹っ飛んだ。

弘樹の動きは性急で(まぁ、仕方のないことではあったけれど)感じる場所がどうとか、位置がどうとか、そんなのは関係なく信史は揺らされた。

「ちょ、っと、ゆっくり・・・・」

弘樹の動きが停止する。

「もうちょい、その、そっと・・・・」

「ゴメン・・・」

謝る必要はない、と思ったのだが。

「んんっ・・・・」

繋がったままで、急に弘樹がカラダを起こした。

「ぃいっって!」

思わず飛び退いて信史が尻を押さえる。奥まで急加速で挿入された体勢になった為、快感どころか痛みが大きすぎたから。

「もう、お前、なにやってんだよ、急に!」

「いや、三村が、体勢的にツライかと思って・・・・」

「いってぇ・・・・切れたらどぉすんだよ・・・」

「ゴメン・・・・」

そう言いながら背中に口づけられると、背筋がゾクゾクする。

「これなら、ツラくないだろ・・・」

再び、後ろから挿入された。

弘樹の片手が前に伸びて、信史の大きくなっているモノを扱きはじめる。

四つん這いの姿勢だったが、信史は声が出ないように上半身を敷き布団に着けて顔を伏せる。

この姿勢は嫌いじゃない。ただ、扱かれる快感と、内部を突かれる快感とで声を上げてしまうのがこのうえなく恥ずかしかった。

真っ白な頭の中で思うのは、本能的な性衝動だけ。

四つん這いでそんなことを考える。

まるでサカリの付いた犬みたいだ。

しょうがないよ、だって俺らも、しょせんは動物なんだから。

 

「無理させて悪かったな」

まだ息の上がっている信史に済まなそうな声を掛けて、弘樹が後処理をしている。

「別に、・・・無理なんてしてないよ」

ちょっと痛かっただけだ。

「もう4時になる」

時間なんて、どうでもいいのに。

信史はまたしても律儀にTシャツを着ようとする弘樹を黙って見ていた。

外は少しだけ薄く色付いていた。

それに伴ってお互いの顔が確認できる程度まで部屋の闇も薄れている。

「寒くないのか?」

「全然・・・・だって一緒に寝てるんだぜ?」

少しの間。

Tシャツを放り出して弘樹が布団に入る。

シングルサイズの布団を二人で使うのだから、よほどカラダをくっつけないとはみ出してしまう。

隣りに並べて敷いてあるシングルサイズの布団は結局今日も使わず仕舞いになってしまった。

「なぁ、寒くないだろ?」

「・・・そうだな」

答える前に少し間があったのは、弘樹の本心の抵抗だろう。

それが分かるから、律儀に嘘を吐く弘樹が可笑しくて信史はまた笑いそうになる。

どうしてこんなマジメなヤツ好きになったんだろ?

答えなんかなくたっていい。

ただ、こうして一緒に居たかった。

肌と肌を合わせて。

 

夜の闇が去った窓からはもう、夜中のような浸食を感じることはない。

信史は眠れないまま、だんだんと白んでいく外の色を感じていた。

最初は誰でも良かったのかもしれない。

暗闇の浸食を、孤独を忘れさせてくれる相手なら。

そんな簡単なことじゃないって分かったのは、いつだっけ?

手近なオンナじゃない。

めんどくさいくらい律儀な。

他の誰でもない。

隣りに眠るこのオトコに。

依存してるのは認める。

でもどこかで分かってる。

答えのない問い掛けなんてないんだってこと。

どんなに望んだって、そんなのは全部“フェイク(偽物)”でしかないかもしれないってこと。

 

いつかは自分たちにも終わりが来るんだろうか・・・・

 

そんなつまらない考えを追いやって弘樹の顔を覗き込む。

眠るその顔は静かで、自分が感じているような不安はないんだろう、と勝手に解釈する。

居たたまれなくなって唇を重ねると僅か開いていた隙間に舌が吸い込まれる。

眠ったままでキスをするのはどんな気分なんだろう?

唇から舌を引き摺ったまま頬から顎へと降りる。

首に吸い付いてから薄明かりに目を懲らす。

自分が記した赤い斑点の集合体を確認すると、寝息は微かに乱れて、また正常に戻った。

 

THE END     

 

;;;あとがき;;;

アンケートお礼ということで、気合い入れました。が、どうやら撃沈してる気もしないでも・・・(汗)

まずは、アンケートご回答ありがとうございました。

杉三はめったに扱わないのですが(つか、ミムユタサイトだしね・・・)書きたいなぁってのはずっとあって。

アンケート結果次第では完全にカテゴリ逸脱しちゃったり?って感じです。

こんなサイトではありますが、今後ともどうかひとつご贔屓にしてやってくださいね!!

 

    感謝を込めて               b.b